ストーリー設定

方針

  • 全5章構成

  • 物語を通して、ミルフィ、サブレナ+カフェの成長を描く。

  • 各章の始まりor終わりは、地の分主体。それ以外のイベントは会話劇形式。

概略

  • 序章

    • ミルフィがいつも見る夢

    • 幼い、名前の知らない少女との溝を描く

    • ミルフィという名前に何か仕掛けがあることを匂わせる

  • 1章

    • ミルフィとサブレナ、フローランの出会い。

    • 古代の種の説明と、ミルフィの目的

    • ミルフィが

詳細

序章

気が付くと――。
何もない空間にひとり、立ち尽くしていた。

いや、ひとりではない。
ふいに、その小さな瞳と視線がぶつかった。

小さく、幼い女の子。
数歩近づくも、彼女は微動だにしない。

ボクはその場でしゃがみ込み、彼女と目線を合わせた。
しばしの沈黙ののち、ボクは問いかける。

「キミの、名前は?」

答えはない。あるわけがなかった。

やがて彼女は、背を向けて歩き始める。
追うことはしなかった。
試みたところで、追いつけたためしがない。

こちらも振り返り、歩き出す。
これがこの不思議な夢から目覚めるためのルールだ。

ボクは、ミルフィ・モモア。

呟いてみる。いまだに、ピンとこない名前だ。

1章

ダンジョンから見つかった古代の種!
そこから生まれた不思議な果実!
すっごく夢があると思わない!?

店内に声が響き渡る。
普通ならどうどうと諫めるとこるところではあるが、
あいにく今はほかに客はいない。
誰に迷惑をかけるわけでもないだろう。

現に、スプラウト地方では、今まさに大旋風!
果実界を席巻する存在なんだから。

果実界、というものが存在するか否かはさておき。
目の前の珍客に強く出れないのは
多少なりとも負い目を感じているからだろうか。


時は数刻前にさかのぼる。

ここグロース地方は、王都辺境に位置する。
管理区外との境にあるためか、いまだに魔物の出現例も多く
外出の際は護身用の杖が手放せない。

香草を採取しに来ていた私は
突如大きく揺れた茂みに、渾身の魔法を放った。

はたして、風邪の塊がとらえたのは――、

ぎゃんっ!

ひとりの少女だった。

ばかぁ!
いきなり魔法放つ奴があるかよぅ...キュウ。

こうして、完全に伸びてしまった彼女を
自らが経営するのカフェに運び込んで今に至るというわけだ。

彼女。ミルフィ・モモアの素性は分からないが、
私と同い年にして、一端の冒険者として日銭を稼ぐ生活をしていたらしい。
その折に、遠くの地方の噂を聞いたようだ。

迷宮から見つかった古代の種
その種から実った果実で、一財をなした(表現要修正)
少女がいる。

にわかには信じがたいが――。

私の目は、彼女の手のひらに吸い込まれる。

王都管理区外の手つかずの迷宮から、
満身創痍、奪取してきたものが、この種というわけか。

これで話題になれば!私も大金持ち!だよ!

興奮冷めやらぬ、といった様子で
なおも彼女は吠え続ける。
なるほど確かに、その噂が真実だとすれば
この種にはそれだけの力があると言える。
ただし、一つこの計画には穴がある。

どうやって話題になるつもりよ。

たまらず口をはさんだ。
しかし彼女は目を輝かせて話し続ける。

この町は、冒険者や衛兵でいっぱいで
大通りにはご飯屋さんがひしめき合ってる!
どこかで雇ってもらって、この種から作った果実で
メニューを作れば

どこで果実を育てるつもり?

あっ...。

途端に黙り込む。
どうやら、そこまでの思慮はなかったようだ。

ええと、それは、どこかあるでしょ。
空き地とか。

さっきまでの勢いはどこへやら。
しどろもどろになってしまった。

あのー。

そこで手を上げるものが一人。

それなら、私の果樹園を使ってみる?

先ほどから黙って私たちのやり取りを
”ほほえましそうに”眺めていた彼女は
フローラン・パインリッヒ
王都の今なお栄華を誇る名家、パインリッヒ家の令嬢であり
この地方の果実の栽培、流通を牛耳る存在だ。

果実がなんだといった話を、聞き流すわけがない。
どこかで、口をはさむ機会を待っていたに違いないのだ。

えっと。フローラ。
さっきの話、信じてるの?
スプラウトの、古代の果実の噂。

もちろんよ。
スプラウトには、年の離れたいとこがいてね
この前、たっぷりとお話を聞かせてもらったの。

しまった、藪蛇だった。

それにね、サブレ。
この子、満身創痍じゃない。
どちらにしてもこのまま追い返すのは酷ってものよ。

そーだそーだ、あー...いたたた。

もしかしたら、このカフェの売り上げにもつながるかもしれないし。
この子の傷がいえるまででも、おいておいてあげたらどうかしら。

柔らかな口調ながら、軽い強制力を伴った言葉と、
やかましく挟み込まれる抗議の声。

はぁ
わかった。でも、あまり勝手なことはさせないから。
それと、お店の手伝いもしてもらうからね。

フローラがパチッとウィンクを飛ばすと、
ミルフィは嬉しそうに両腕を振り上げ、
そして苦しそうに全身の痛みを訴えるのだった。

いたた、そ、そういえばキミの名前は?

サブレナ・ブルーベル。サブレでいいわ。

こうして、私たちの、短く騒がしい
決して忘れることのできない物語が、始まった。